近年のオンデマンド印刷は、ただ「小ロットを早く刷れる」だけでなく、PP加工やニス、箔押しなど、従来はオフセット印刷が前提だった特殊加工にも対応できるようになってきました。
一方で、「どこまで表現できるのか」「何に注意すべきか」 は、特殊加工の種類ごとに異なってきます。
この記事では、オンデマンド印刷を前提に、PP加工、ニス加工(全面・スポット・厚盛り)、箔押し加工(オンデマンド箔・ホット箔)といった代表的な特殊加工について、加工の可否・特徴・注意点・向いている用途 を整理して解説します。
- オンデマンド印刷×特殊加工の基本を一通り把握しておきたい
- オンデマンド印刷に特殊加工を組み合わる場合の条件や注意点を把握したい
- 特殊加工ごとのメリット・デメリットを整理して比較したい
- 各種加工のデータ作成時の注意点や納期、コストについても把握しておきたい
オンデマンド印刷でできる特殊加工

オンデマンド印刷は、「必要な時に必要に応じて印刷」でき、小ロットと短納期を強みとした印刷方式です。印刷機の進化により、最近ではオフセット印刷に匹敵する高品質な仕上がりが実現可能となり、さらに特殊加工との組み合わせも多様化しています。
ここでは、オンデマンド印刷と組み合わせやすい特殊加工の全体像を押さえておきましょう。
そもそも特殊加工とは?
ここでいう「特殊加工」は、用紙にインキ(トナー)をのせる印刷のあとに行うもので、表面や形状に、耐久性や装飾性、機能性を付加する工程の総称です。具体的には以下のような加工があります。
- 箔押し加工
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金・銀・ホログラムなどの箔を熱や圧力で転写する加工
- PP加工
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薄いPPフィルムを貼って保護・質感UPするラミネート加工
- ニス加工
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透明のニスやクリアトナーをのせて光沢・マット感や厚盛りを出す
- エンボス加工
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紙を凸に浮き上がらせる加工
- デボス加工
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紙を凹ませて刻印のような表情を出す加工
- 発泡(発泡ニス/サーモグラフィなど)加工
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熱でふくらむ樹脂を使って、もこもこした厚みをつける加工
オンデマンド印刷は、トナー(粉末)や液体トナー、UVインクジェットなど、印刷方式が多岐にわたるため、特殊加工との相性には注意が必要です。次の早見表で、ざっくりとした対応状況を確認してみましょう。
【早見表】オンデマンド印刷と特殊加工の可否
オンデマンド印刷と各特殊加工の組み合わせイメージです。実際の可否や条件は、印刷会社や設備によって変わります。
| 加工 | オンデマンド印刷での加工可否 | 仕上がりの特徴 | 注意点 | 活用シーン例 | 納期影響 |
|---|---|---|---|---|---|
| PP(グロス/マット/ベルベット) | 〇デジタル対応フィルム推奨 | グロス:高光沢マット:反射低減で上質ベルベット:しっとり | トナー面の密着に差。デジタル対応PP推奨角割れ・ラミシワ注意バーコード可読性 | 冊子表紙・名刺の耐擦れ向上パッケージ簡易保護 | +0〜1営業日 |
| ニス(全面・スポット・厚盛り) | 〇機種/後加工で可 | 全面:軽い光沢保護スポット:ロゴ等のアクセント厚盛り:段差で立体感 | ベタ広面はムラ・反りに注意最小線幅0.5pt目安厚盛りは割れやすい | ロゴの艶出し写真ハイライト強調名刺・カードの高級感UP | 1~2営業日 |
| 箔押し(オンデマンド箔/ホット箔) | オンデマンド箔:〇ホット箔:△(版代・条件依存) | 金銀やメタリック鏡面ヘアラインやホログラム等も可 | 細線・小文字に限界あり広面積はピンホール出やすいPP・ニスとの重ね順注意ホットは温度・圧の最適化が必須 | 高級名刺・ショップカード表紙・スリーブのロゴ強調 | オンデマンド箔**+1〜2日**/ホット箔**+2〜3日** |
| エンボス(浮出し) | 〇後加工で専用の型が必要 | 凸の立体感と陰影で素材感アップ | 厚紙推奨極細や網点は再現不可見当ずれ注意 | 招待状・証書・高級カードのロゴ浮出し | +2〜3営業日 |
| デボス(空押し) | 〇後加工で専用の型が必要 | 凹の落ち着いた深みインキ上からでも濃度感が出る | 裏面へ凹みが透けやすいPP後は硬化で深押ししづらい | 革調・クラフト系との相性◎ロゴ刻印風 | +2~3営業日 |
| 発泡(発泡ニス/サーモグラフィ等) | △設備・材料依存 | もこもこした厚盛り質感半光沢〜艶あり | 細線不可・広面積ムラ耐擦れ・耐熱やや弱い臭い残りに注意 | キャラクター表現POP・季節販促(ニット/雪/泡を想起) | +4~5営業日 |
凡例:〇=対応可/△=条件付き/✕=非推奨(設備等で例外あり)
納期はあくまで目安です。
オンデマンド印刷とPP加工

PP加工は、オンデマンド印刷と特に相性が良い代表的な表面加工です。
PP加工の特徴
印刷物の表面に、薄いポリプロピレン(PP)フィルムを熱や圧で貼り合わせる加工です。
キズ・汚れ・水滴から印刷面を守りつつ、光沢やマット感、手触りをコントロールできます。
名刺や冊子表紙、メニュー、パッケージなど小ロットでも見栄えと耐久性を両立できるのが特長です。
PP加工の種類は?
- グロスPP
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高い光沢感で、発色・コントラストが強く見える。写真やビジュアル重視のデザイン向き。指紋はやや付きやすい。
- マットPP
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反射を抑えた上質な仕上がり。落ち着いたトーンになり、高級感が出る。強く擦ると白化が目立つ場合あり。
- ベルベットPP
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微細な凹凸によるしっとりした手触り。指紋が目立ちにくい一方、長期使用で部分的に艶が出ることも。
オンデマンド印刷でPP加工を施すメリット
オンデマンド印刷にPP加工を乗せることで、次のようなメリットがあります。
- 擦れ・汚れ・水滴に強くなる
-
トナーはもともと耐摩性がありますが、PPを貼ることでさらなる保護が可能です。輸送時の擦れや、受け渡し時の指紋・軽い水滴から印刷面を守れます。
- 見栄えをさらに追求
-
グロスPPなら写真や色ベタがより鮮やかに、マット/ベルベットPPなら落ち着いた高級感のある質感に。同じデザインでも「きちんと作った感」が出やすくなります。
- 二次加工や長期使用も安心
-
折り加工・製本・抜き加工などの後工程で、角欠けやヨレを抑えやすくなります。長期間使う冊子表紙・メニュー・ショップカードなども、劣化しにくいです。
- 小ロットでも採用しやすい
-
PP加工は、小ロット案件・オンデマンド印刷物向けに専用PPフィルムや小部数対応サービスとして提供されており、実際に数部〜十数部レベルでも採用されており、コスト面でも優れています。
PP加工をする際の注意点
オンデマンド印刷の特性上、PP加工を施す際にはいくつかの注意点があります。
- 紙と厚みの組み合わせ
-
薄い紙に片面のみPP加工を施すと、フィルムの収縮により反りが発生しやすくなります。反りを抑えるためには、以下3つの方法があります。
- 厚紙を使用する
- 両面PP加工を施す
- 紙目(繊維方向)を考慮する
- トナーとの密着性
-
オンデマンド印刷のトナーは、オフセット印刷のインキとは性質が異なるため、一般的なPPフィルムだと時間の経過とともにフィルムが浮いたり剥がれたりする場合があります。オンデマンド印刷物にPP加工をする場合は、デジタル印刷対応のPPフィルムを使用することが推奨されます。
- バーコード/QRの可読性
-
グロスPPは光沢が強いため、スキャナーの光が反射し、バーコードやQRコードの読み取り精度が低下する可能性があります。可読性を優先する場合は、マットPPを選択する、あるいはコード部分だけをPPなしとするといった対策が有効です。
- 筆記性・捺印性
-
PPフィルムの上は、ボールペンやスタンプのインキが定着しにくくなります。後から手書き(宛名・日付・サイン欄など)や捺印が必要な箇所がある場合は、「筆記ゾーン」としてPP加工を避けるようにします。
オンデマンド印刷とニス加工

ニス加工は、オンデマンド印刷の「仕上げ」として、光沢や立体感を少し足したいときに便利な加工です。
ニス加工の特徴
印刷物の表面に透明コーティング剤(ニス)を塗布する加工のことです。このコーティング剤には、油性、水性、UV硬化型、あるいはオンデマンド印刷機のクリアトナーなどがあります。
光沢やマット感といった質感を与えつつ、擦れや汚れを軽減できます。ロゴの強調や写真のハイライト、簡易的な保護としても有効です。
オンデマンド印刷では機種・用紙との相性を事前に確認する必要があります。
ニス加工の種類は?
- 全面ニス
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印刷物全体にニスを塗布する方式。軽い光沢と汚れ防止を目的としており、オフセット印刷では「ニス引き」が一般的です。
- スポットニス(部分ニス)
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ロゴや特定のデザイン要素など、必要な部分のみにニスを塗布する方式。光沢のコントラストでその部分を際立たせるアクセントとして機能します。
- 厚盛りニス(3Dニス)
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通常のニスよりも厚くニスを盛る方式。段差や立体感を出すことで触覚に訴えかける効果があり、高級感やユニークなデザインを演出できます。
オンデマンド印刷にニス加工は原則不要
オンデマンド印刷(特にトナー方式)は、インク皮膜そのものが比較的固く、擦れに強いという特徴があります。
そのため、次のようなケースでは、あえてニスをかけなくても問題ないことがほとんどです。
- 短期配布のチラシ・DMなど、使用期間が短いもの
- 屋内での軽い取り扱いにとどまり、擦れや水滴リスクが小さいもの
- ベタ面が少なく、写真や濃色の面積もそこまで広くないデザイン
- コストを最優先し、細かな質感にはあまりこだわらない場合
一方で、「厚盛りニスで立体感を出したい」「一部だけツヤを強調したい」といった場合にはニス加工は非常に効果的です。
厚盛りニス加工の注意点
デザイン性を高める厚盛りニス加工は、その特性からいくつかの注意点があります。
- 細すぎる線や小さい文字の再現性
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極細線や小さい文字は、ニスが盛られることで潰れやすくなります。デザイン上は、線幅0.5pt以上を目安に、ある程度太さのある形状にするのがおすすめです。
- 折り位置・端は避ける
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厚盛りニスは硬化すると脆くなるため、ニスを盛った部分で折り加工を行うと、割れたり剥がれたりしやすくなります。どうしても折り位置にかかる場合は、スジ入れ加工が必要です。
- 若干の見当ずれが生じる可能性
-
印刷後にニスを塗布する工程で、わずかな見当ずれ(印刷とニスの位置ずれ)が生じる可能性があります。細いフチギリギリを狙うデザインは避けて、余裕のある塗り分けにしておくと安心です。
- PP加工との組み合わせ
-
PP加工後の紙は硬化するため、ニスの密着性や仕上がりに影響が出る場合があります。設備によっても異なるため、事前確認が必須です。
オンデマンド印刷と箔押し加工

オンデマンド印刷でも、条件を満たせば箔押しを組み合わせることができます。小ロット・短納期との相性が良いのがオンデマンド箔です。
箔押し加工の特徴
金銀やメタリックカラー、ホログラム箔を、版・熱・圧力(または専用接着層)で紙に転写する加工です。
通常の印刷では再現しにくい鏡面感・メタリックな質感・ホログラム効果が出せるため、ロゴや文字などを目立たせたり高級感を演出したりするのに非常に有効です。
箔押し加工の種類は?
- ホット箔
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版を作成し、版を加熱して圧力をかけることで箔を転写する、伝統的な方式。仕上がりが美しく、箔の種類も豊富ですが、製版代と納期がかかります。
- コールド箔
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UV硬化接着剤を印刷し、その部分に箔を転写する方式。グラデーションや微細なデザインが叶う一方で、ポイント使いや小ロットの場合はコストがかさみやすいです。
- オンデマンド箔
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版が不要で、専用のトナーや接着剤の上に箔を転写する方式。小ロット・短納期に対応でき、ホット箔に比べてコストを抑えられます。
オンデマンド箔のメリット
オンデマンド印刷の特性を最大限に活かせるオンデマンド箔には、以下のようなメリットがあります。
- 小ロット・短納期実現
-
従来のホット箔のような金属版が不要なため、版代がかからず、小ロットの注文でもコストを抑えられます。製版工程がないので短納期にも貢献します。
- 多様なメタリック表現が可能
-
金銀だけでなく、ホログラム箔やヘアライン箔など、多様なメタリック表現をデジタルデータから直接実現できます。
- 表面に凹凸が出ないフラットな仕上がり
-
ホット箔のように強い圧力をかけないため、箔押し部分の裏面に凹凸(裏抜け)が出ません。両面印刷や薄紙への加工でも安心して使用できます。
オンデマンド箔の注意点
利便性の高いオンデマンド箔ですが、従来のホット箔と比較して注意すべき点もあります。
- 大ロットでは従来の箔押しの方が安くなることも
-
何千〜万枚単位の大ロットだと、版代をかけても従来のホット箔の方がトータルコストが安くなる場合があります。
- 印刷サイズに制限がある
-
オンデマンド箔機の最大用紙サイズや、対応できる紙の種類・厚みには制約があります。サイズとしてはA7〜A4程度(最大でもA2のケースが多い)が一般的です。
- 表面はできるだけ平滑な素材が推奨
-
凹凸の大きな紙やざらざらした紙だと、箔がうまく乗らず、ピンホールやかすれの原因になります。コート紙や平らで滑らかな高級紙との相性が良好です。
- 多少の見当ずれを想定したデザインに
-
オンデマンド箔も後加工であるため、多少のずれが生じる可能性があります。特に複数の色や加工を重ねる場合は、注意が必要です。デザイン(箔使用)の間隔を広めにとったり、広範囲なベタを避けたりしつつ多少の見当ずれを見越したデザインにするのがベターです。
オンデマンド印刷とエンボス/デボス加工

エンボス加工・デボス加工は、それぞれ紙そのものを立体的に変形させる加工で、オンデマンド印刷物にも後加工として組み合わせることができます。
エンボス加工/デボス加工の特徴と仕組み
- エンボス加工(浮出し)
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凸版と凹版で紙を挟み、圧力をかけて表面を盛り上げる加工です。ロゴや模様に陰影がつき、高級感やクラフト感を演出できます。
- デボス加工(空押し)
-
紙を凹ませる加工で、刻印や焼き印のような落ち着いた雰囲気になります。インクを刷った上からデボスをかけると、濃度が締まって見える効果もあります。
どちらも、専用の金属版(型)が必要な後加工なので、オフセット印刷と同様に、オンデマンド印刷でも「版代+加工費」分のコストと納期の増加が発生します。
金型の大きさにもよりますが、8,000~40,000円程度の追加コストと1週間程度の納期延長となるケースが一般的なようです。
「小ロット短納期に強い」というオンデマンド印刷本来の特性と相反するため、エンボス加工・デボス加工による効果とコストとを比較検討するのが望ましいと言えます。
活用シーンと注意点
手で触って凹凸がわかる仕上がりのため、他の印刷物との差別化が図りやすい点、控えめで上品な印象の中にも高級感を与えられる点が最大のメリットです。
以下のような「触ったときの印象」を重視する印刷物と好相性です。
- 招待状・案内状・証書などのフォーマルな印刷物
- 高級名刺・ショップカード、ブランドカード
- クラフト紙や厚紙を使ったブランドパッケージ・タグ
ただし、オンデマンド印刷とエンボス・デボス加工の特性上、考慮が必要な点もあります。
- 厚めの紙を使うこと(薄紙だと裏抜けが目立つため)
- 網点や細い線は再現しづらいため一定以上の太さで表現すること
- オンデマンド印刷のトナー皮膜が割れない範囲の圧力に留めること
オンデマンド印刷と発泡加工

発泡加工は、もこもこした厚みをつけられる、やや特殊な後加工です。特徴的な見た目にすることができます。
発泡加工の特徴・仕組み
発泡ニスやサーモグラフィインクを使用した加工が一般的です。
インクやニスに特殊な樹脂粉を混ぜる、あるいは樹脂をのせた上から加熱することで、 表面がふくらみ、盛り上がります。半光沢からツヤありの質感になることが多く、指で触ってわかるほどの厚み・立体感が出せます。
オンデマンド印刷と組み合わせた場合でも、専用インクや加熱工程が必要なため、初期コストとリードタイムが大きめです。
通常のオンデマンド名刺に比べて+1〜2万円前後(1枚あたり+100〜200円程度)の追加コスト、納期も通常より4〜5営業日ほど長くなるケースが一般的です。
冊子印刷など数千部単位の大ロットになるほど1枚あたりの単価は下がっていきます。
活用シーンと注意点
発泡加工は、ユニークな表現をしたい場面で活躍します。エンボス加工・デボス加工以上に、見た目も手触りもふっくらぷっくりとしているため、差別化を図りたいときやポップな世界観を印象づけたい際に最適です。
- ロゴやタイトル部分をぷっくり強調したいとき
- ニットや毛糸、雪、泡、雲などの「ふわふわ・もこもこ」感を表現したいとき
- キャラクターグッズやPOPなど、遊び心のある販促ツール
一方で、以下のような制約や注意点もあります。
- 対応する印刷機・設備が限られる
専用の装置・材料が必要なため、取り扱いのある印刷会社はPPや箔ほど多くありません。 - 細かい再現は苦手
極細線や細かい文字は、発泡によって潰れがちなため、太めの線・シンプルな形状にデザインする必要があります。 - 耐擦れ・耐熱はやや弱い
発泡部分はこすれに弱く、熱に近づけると変形するおそれがあります。
- 納期は比較的長くなる
試作・テストを含めると、標準納期+5日程度の余裕を見ておくと安心です。
よくある質問(FAQ)

ここからは、特殊加工やオンデマンド印刷に関するよくある質問に回答していきます。
PP加工とニス加工の違いは?
主な違いを表にまとめました。
| 項目 | PP加工(ラミネート) | ニス加工(コーティング) |
|---|---|---|
| 仕組み | フィルムを熱圧着で貼り付ける | 透明なコーティング剤を塗布する |
| 保護性能 | 非常に高い(耐擦れ、耐水、耐久性) | 比較的低い(簡易的な保護) |
| 質感 | グロス、マット、ベルベットなど多様 | 光沢、マット、厚盛り(立体感) |
| コスト | ニス加工より高価になる傾向 | PP加工より安価になる傾向 |
| 剥がれ | フィルムが剥がれるリスク(特に角) | ニスが割れる、ムラになるリスク |
| 納期 | 比較的短い(+0〜1営業日) | 比較的短い(+1〜2営業日) |
耐久性重視ならPP、意匠性のアクセント重視ならニスと考えると選びやすくなります。
特殊加工を施すと納期はどれくらい変わる?
特殊加工は、印刷後に追加の工程が必要となるため、必ず納期が延長されます。目安は以下の通りです。
| 加工の種別 | 納期の目安 |
|---|---|
| PP加工 | +0〜1営業日 |
| ニス加工 | +1〜2営業日 |
| オンデマンド箔 | +1〜2営業日 |
| ホット箔 エンボス/デボス加工 | +2〜3営業日 |
| 発泡加工 | +4〜5営業日 |
上記はあくまで目安であり、印刷会社の混雑状況や加工内容によって変動します。さらに、校正回数や後工程(製本・抜き・組み立て)などでも変動するため、必ず事前に相談・確認しましょう。
デザインデータを作成する際の注意点は?
特殊加工を施す場合、デザインデータは以下の点に注意して作成する必要があります。
- 加工用データを作成する
-
PP加工やスポットニス、箔押し、エンボス、デボスなどは、加工する部分を特定するための専用データ(版下データ)が必要です。通常、K100%の特色で作成します。
- 見当ずれを想定したデザインにする
-
後加工では、印刷面と加工位置にわずかなずれ(見当ずれ)が生じる可能性があります。特に細い線や小さな文字、複数の加工を重ねる場合は、多少ずれても問題ないデザインを心がけ、印刷会社へ相談するのがおすすめです。
- 極細線や極小文字は避ける
-
箔押しや厚盛りニスは、細すぎる線や文字は再現できない、または潰れてしまう可能性があります。印刷会社が指定する最小線幅(目安:0.5pt以上)を守る必要があります。
- 折り・断裁位置に気をつける
-
厚盛りニスや箔押しは、折り曲げると割れたり剥がれたりするリスクがあります。折り位置や断裁線のギリギリに加工を配置するのは避けてください。
さらに、印刷会社ごとに「推奨線幅」「推奨最小文字サイズ」「データ作成ルール」が異なるため、事前に確認、不明点は問い合わせしておくと安心です。
特殊加工ができないものは?
代表的には、次のようなケースが「難しい・非推奨」とされることが多いです。
- オンデマンド機が対応していない用紙・サイズでのPP・ニス・箔
- 極端に薄い紙(発泡・エンボス・デボスで裏抜けが激しいため)
- 耐熱性の低い素材(発泡加工やホット箔の高温に耐えられない)
- 過度に細かい線・極小文字・大面積ベタでの箔・発泡・厚盛りニス
- 特殊な表面加工が施された素材(撥水加工などは、PPフィルムやニスの密着性低下の恐れあり)
また、食品への直接加工、肌に触れる部分への高温で溶ける発泡剤使用など、用途上NGとなるケースもあります。必ず用途を伝えたうえで可否を確認しましょう。
まとめ
オンデマンド印刷は、小ロット・短納期というメリットを活かしつつ、PP加工、ニス加工、箔押し加工といった特殊加工を組み合わせることで、オフセット印刷に負けない付加価値を生み出すことが可能です。
一方で、以下のようなポイントを押さえておかないと、割れ・反り・ムラ・読みにくさといったトラブルにつながることも。
- トナー皮膜との相性
- 用紙の厚み・紙目
- 最小線幅や文字サイズ
納期延長やコストが追加されることも踏まえ、「この用途・部数・予算で、どの特殊加工がベストか」「データ上、どこまで攻めてよいか」を印刷会社と相談しながら検討しましょう。
創業50年のエクセル・タムでは、紙製品だけでなく、布、プラスチック系素材、ビニール製品から皮革まで幅広い素材に対応しています。「このサイズや素材での印刷はできる?」「持ち込みで印刷してもらいたい」といった検討段階の方もお気軽にご相談ください。

